懐かしのきざはし浜と袋浦

もう11月か。
日本は紅葉がキレイな季節だろうなぁ。
色とりどりの四季を懐かしく思いながらも、今ここでしか感じることのできない世界をありがたく愉しんでおります。
だって、家の近所にペンギンなんて歩いてないもんなぁ。

先週はGPS測器保守のため10月31日から1泊2日で、きざはし浜という昭和基地から70km程離れた露岩地域へ出かけてきた。
きざはし浜は53次で来た時にも湖沼調査に同行させてもらって来たことがあるので6年ぶり。
雪上車で5時間半ほどドライブしてやっと見えてきたきざはし浜は、遠くから見ても何となく見覚えがある地層で小屋の場所の見当がついた。きざはし浜の小屋は目の前が海なのでトイレは海で済ませていた。用を足しながら眺めていた斜めの地層が脳裏に焼き付いていたようだ。

きざはし小屋から海の方を眺めると大きな絶壁の山「シェッケ」が見えていたのもよく覚えている。
きざはし小屋へ行く前に、そのシェッケの近くまで雪上車で行ってみた。
海が凍っているからこそできる、夏では考えられない絶景だった。
反対側から見るとたいしたことない感じなのだけれど、、、

近すぎると全景が写らないほどのスケール!
絶壁の上の方に真っ白なユキドリが飛んでいるのも見られた。
あんなとこに巣があるんだ!!ビックリ。。
そんな絶景寄り道もしながら、夕方頃きざはし小屋へ到着。
GPS測器は小屋のすぐ近くにあった。

GPS保守も済ませ、夕飯も食べた後、まだ日も明るかったので小屋から歩いて鳥の巣湾という場所にあるペンギンルッカリーを見に行った。

1時間ほど歩いて鳥の巣湾にたどり着くと、小さな可愛らしいルッカリーが見えてきた。

まん中にある石にはボス(?)ペンギンが居座っている。

ルッカリーの手前には用心棒っぽいペンギンもいてオモシロい。
のどかな集落を見て癒されたけど往復2時間ちょっとのお散歩はけっこう疲れた。
小屋へ戻る頃にはすっかり日も暮れ、かろうじて夕日に照らされた赤いシェッケが美しかった。

翌朝、出発前に6年前の記憶をたどりながらきざはし小屋付近を散策した。
このあたりには湖がたくさんある。( 参照:「いのちのバトンタッチ」 )
湖の周辺を歩いた記憶はあったけど、その湖も凍っているのでショートカットできてしまう。

凍った湖面にはいっぱい割れ目の模様があって芸術的だった。

下から湧き出てきた泡が凍ったような模様も見られた。
この下にコケボウズがいるのかな〜と考えながら、ツルツルの湖面をへっぴり腰で歩いた。コケボウズというのは、この辺の湖底に見られるコケと藻類が共生し合った塊。(参照:「なまず池」
53次の時しらせで同室だった田邊優貴子さんにコケボウズの写真や動画を見せてもらったことがあるけど、ホントこの南極の湖の底であんな緑豊かな世界が広がっているのかと思うと不思議だ。

そんな魅力的なきざはし浜をあとにし、昭和基地への帰路についた。
途中、お昼ゴハンにカップ麺とお湯を準備していたのだけど、車内で食べようとしたとき箸を忘れたことに気が付く。
仕方ないので帰り道で立ち寄れそうな観測小屋を考えたとき、ペンギンルッカリーのある袋浦が思い浮かんだ。
私の大好きな場所だ。(参照:「ペンギン保育園」 )
懐かしのアップルハット。

アップルハットの隣りにある白い真四角な小屋(通称「とうふハット」)の中に食器類が置いてある記憶があったのだけど、きれいさっぱり何にもない。
腹ぺこでやっとたどり着いたのに箸はなく、餓えた目に飛び込んできたのは小屋の横に落ちていた竹竿だった。
その竹竿を割って裂いて、ささくれだらけの箸ができあがり、なんとかメシにありつけた。

ワイルドな食後、ついでに袋浦のペンギンルッカリーも見ていくことにした。
袋浦は100個以上の巣があるわりと大きなルッカリー。

ちょうどペンギン達は巣作りの真っ最中みたいだった。
小石をクチバシでくわえて地道に1つずつ運んでくる。
気の遠くなるような作業だ。

他人ならぬ他ペンギンのいっぱい集めてきた小石を盗むコソドロもいる。
バレバレな盗み方するもんだから、そこかしこでケンカが勃発する。

ほんと見ていてオモシロい。

まだ小石1個めのペンギンくんも、こしゃくなコソドロペンギンくんも、がんばってステキな巣作りして、かわいいヒナが産まれるといいね!