ルート工作

本日の日の出6時44分、日の入り17時52分。

なんだか最近とってもまとも。

2ヶ月ほど前まで日の出&日の入りナシな生活を送っていたのが嘘のよう。
そしてあと2ヶ月もすると、今度は日の入りナシな毎日がやってくる。

わかっちゃいるけど、やっぱ不思議だ。

明るい時間が長くなって気分的には嬉しいのだけれど、暗い時間が短くなっていってザンネンなのがオーロラ観賞のチャンスがなくなっていくこと。
午前4時の空、目で見てもよくわからないんだけど、オーロラ仕様のカメラで撮影するとすでに空の下の方が朝焼けのように写る。

夜明け前の空、オーロラの上に逆立ちするオリオン。
月も星座も、ここで見るものは日本と比べるとすべて逆さま。(参照:「ゴールデンウィーク」 )

日本が晴れた時には昭和基地がブリザードだったり、昭和基地が晴れたと思ったら日本で雨だったりと、なかなかタイミングが合わなかったのだが、バイト時代の友人Sさんに協力してもらい、やっと同じ日に撮影できた日本と昭和基地の半月。

太陽は昇るもの。
夜は暗いもの。
オリオン座の左上には赤い星ベテルギウス。
そんな「あたりまえ」が「あたりまえ」でもないんだなぁと実感できる。
自分の世界の狭さ、ちっぽけさを感じる。
そして、不思議だなぁと感じながらも少しだけ自分の常識や概念が広がった気がしてうれしい気持ちになる。

北半球では地平線ギリギリ下の方にしか見ることができないため、見ると幸せになるとか長生きするとか、とにかく縁起のいい星として知られるカノープスも、ここ南極の空ではド派手に見つけやすく輝いている。

こんなステキな夜空を愉しめるのもあとわずかなのかなと思うと少しさみしい。


しかし、日が長くなったことで日中の活動時間は格段に延びた。
最近は、凍った海の上に道を作っていくルート工作が盛んに行われている。
ここ数日、わたしもお手伝いに行かせてもらっている。
スノーモービルで海氷状況を見ながら安全そうなルートを探し旗を立てていく。
旗から次の旗までの角度を測ったり、間の距離を記録したり、海氷の厚さを測ったりしながら。
こういった地道な作業で、オングル島から別の場所へ行くための道路が海の上にできていく。

スノーモービルは雪上車よりもスピードが速いのはいいんだけど、とにかく寒い。
寒いというか、もう痛い。
指先や顔がちぎれそうに痛い。
でも、氷山や南極大陸なんかを眺めながら海の上を激走する感覚は格別だ。



オングル島の対岸、南極大陸の縁に向岩と呼ばれる場所がある。
向岩には地圏のGPS観測点があり、越冬期間中そこに測器を設置しに行くというミッションがある。
向岩ルートもできたので、先日、アンテナと受信機を設置しに向岩へ行ってきた。
昭和基地から雪上車に乗って海の上を1時間弱ほどドライブ。
この日は快晴で本当に心地よかった。

こんなふうに色んなルートができていくと、地圏のGPS測器を設置しに行ったり無人観測点の保守に出かけたりすることが可能になる。

中継拠点旅行隊が出発したり、夜空の鑑賞チャンスが減ってきたり、なにかとサミシイこともあるけど、今まで出かけられなかった所に出かけられたり、あらたな愉しみもできつつある。