宇宙よりも遠い場所で32人

2月13日、とうとうオングル島は越冬隊32人ぼっちになった。
夏作業を終えた夏隊の皆さん、残留支援をお願いしていた58次の皆さん、ドロムラン(飛行機)で帰って行く先遣隊の皆さん、数日かけて少しずつ島を自衛隊ヘリで飛び去って行った。
女子の風呂エリアには個人の洗面道具などを置ける棚があるのだが、いっぱいだった棚の荷物が1人減り2人減り、、、
ついに私ひとりぶんになった。

58次隊は女性隊員が6名も越冬していたので、女風呂がリニューアルし洗面台やトイレの数も増えて広くなっていた。しかし、59次で女は私ひとり
いま日本では女子高生が南極へ行くというストーリーの「宇宙よりも遠い場所」というアニメが放送されているらしいが、女子高生が4人も来てくれたら、きっと男性隊員は大喜びだろうな。

53次の時には2月21日の最終便ヘリが2往復して夏隊みんな一緒に帰って行った。それまでは夏隊も越冬隊も管理棟に皆ぎゅうぎゅう詰めで暮らしていたので、夏隊を見送った後のさみしさはひとしおだったのではないだろうかと想像する。
ヘリのすさまじいダウンウォッシュにも負けず必死に手を振る越冬隊の皆さんを、あふれる涙越しにヘリの中で見ていたことを思いだす(参照:「おえつ」)。今回は、あの時してもらったように、すんごいダウンウォッシュに吹っ飛ばされながらも必死に手を振りつづけられるよう頑張った。

32人生活になって初めての休日日課には漁協係主催の西ノ浦釣りツアーが開催された。
もっと寒い時期、海氷に穴を開けて釣りをすると釣った瞬間に魚が凍るらしいけど、今は普通に日本海かどっかで釣りしてる雰囲気(イメージ)。
私は連れなかったけど、他の皆さんの釣った昭和ギスと呼ばれる魚を夜ご飯にいただいた。美味

午後のひとときには喫茶係による手作りアップルパイがふるまわれ、ゆったりとくつろいだ。
また、別の休日日課にはイベント係主催のバレーボール大会が開かれ、居住棟ごと総当たりの熱い戦いが繰り広げられた。最下位のチームは夕飯の皿洗いが待っているとのことで皆必死。遠くに氷山の見える手作りアウトコートでのバレーボールを愉しんだ。

これから1年という日々を、こうやって32人という限られたメンバーで愉しみながら過ごしていくんだなぁと思う。

最近の私の大きなたのしみは日暮れ前の空を見ること。
夕飯終わって21時前くらい、キリリと冷たい空気の中、カメラを持って小高い丘に登る。何回もシャッターを押したくなるような深い青とピンクのグラデーションを見ることができる。

私はこの空が大好き。(参照:「月」
夜とはいえまだ真っ暗になりきらないくらいの空に昨晩はオーロラも見られたらしい。
まだまだ越冬生活は始まったばかり。