ボツンヌーテンとポチ

16日から二泊三日で「明るい岬」という沿岸の露岩域へ、そして昭和基地に帰ってきてすぐ翌日からは「ボツンヌーテン」という内陸の露岩域へまた二泊三日で野外観測に出ていた。
というわけで1週間ほど野外続きだったわけだが、洗濯物はさほど増えない。一般的な旅行なら毎日お風呂にも入るし着替えもする。けど、野外観測の場合、勿論お風呂にも入らないし、着てる服もずっと同じ
寒いし乾燥しているので、少々汗かいてもマヂで不快感はほとんどないに近い。基地に帰ってくると多少まわりに迷惑かけてないか自分のにおいを気にしたりはするけど(^_^;)ちょっと頭ペッタリしてますけど何か?ってくらいのカンジ。

「明るい岬」は昭和基地の北東約90kmに位置している露岩域で、これまでに行ったルンドボークスヘッタや雪鳥沢よりは少し遠く、ヘリで40分くらいの場所。明るい岬では観測点の近くにペンギンのルッカリー(営巣地)があり、テントの近くをペンギンがウロウロしていたりして癒やされた。保守作業が終わってからルッカリーを見に行ったりもした。

「ボツンヌーテン」は、
昭和基地の南約170kmに位置する標高1486mの岩山。第一次観測隊が調査を行い初登頂に成功した話は映画「南極物語」でも登場している。実際、ヘリで上空から眺めると、真っ白な氷の大平原の中、ポツンとそこだけ茶色い岩山がそびえ立つ壮大な姿は人間を魅了する。

「ボツンヌーテン」とは、ノルウェー語で「奥岩」という意味だそうで、まさに奥の方にポツンとあるデッカい岩だ。
これまで昭和基地からヘリに乗って移動したなかでは一番遠く、50分くらいは乗っていた。途中、しらせ氷河というめちゃくちゃデカイ氷の川を越えて飛んでいったのだが、その流れの規模がすご過ぎた。写真でスケールの大きさが伝わらないのが残念。

デジタル大辞泉によると、氷河とは、
“地上に降り積もった雪がしだいに厚い氷の塊となり、重力によって流動するようになったもの“
だそう。表面がバリバリに裂けて、底なしくらいに深い谷が無数に広がる。見てるだけでも恐ろしい。一次隊は犬ぞりでボツンヌーテンに行ったというけど、いったいどんなルートで行ったんだろう。謎でいっぱい。

そんなボツンヌーテンでは、山頂付近にあるGPS観測点に測器を取り付けて1日置いた後、その測器を回収しに行くメンバーに入れてもらい山頂まで登らせてもらった。すんごい傾斜の雪面を恐竜の爪ですか?ってくらいのアイゼンつけて登っていく。
フィールドアシスタントのT村さんにロープで引っ張られながら、ほぼほぼ4足歩行、ポチ状態でついていった。
たまに見下ろす景色は素晴らしかったけど、滑り落ちたら確実に死ぬだろうなっていう真っ白な世界がどこまでも深く広がっていた。
山頂で食べた大福は格別に美味しかった。

ボツンヌーテンは基本的に気温が低く風が強い。
トイレも飛ばされる可能性があるので、周りを雪の壁でカバー。おしりふきやウェットティッシュもペール缶トイレと一緒に備え付けるのだが、結局ぜんぶ凍って使えなかった。いままで泊まった野外生活の中では最も南極らしかったかもしれない。

とっても地層萌♥な風景

そして22日からやっと昭和基地でも日の出と日の入りの表記が復活した。やっと太陽が沈むようになったのである。
夕日に照らされたピンク色の不思議な雲がボツンヌーテンの夜空にまだら模様を描いていた。