シアワセな歯磨きの時間

ルンドボークスヘッタの後、1泊2日で雪鳥沢という場所にルンドと同様、地震計の保守作業をしに行った。あと、現地で一緒になった国土地理院さんの古いGPS観測点の撤去作業もお手伝いした。小高い丘のてっぺんに設置してあって、破壊した廃材を持って降りるのも一苦労だった。古い観測機器の設置箱の側面には過去の隊の人達の名前が落書きしてあり、設置した当時の人達の苦労や思い入れなど歴史を感じた。
2日目はピックアップが昼の便だったので朝から眺めの良さげな山の上に登った。

雪鳥沢も南極大陸の沿岸部にある露岩域で、赤茶けたマーブル模様の大地と海が見える。数日前までは真っ白な凍った海だったらしいが、強風で氷が飛ばされたらしく、すっかり開けた海が姿を現していた。山の上から遠くの海を見ると所々に氷山も見える白い海が広がっていた。
こういった場所で寝泊まりして、私が1番大好きな時間は歯磨きの時間。白夜期の今、太陽が沈むことはないのだが、太陽高度が下がる夜には気温がグッと下がり夕方っぽいカンジにはなる。
ピリっと冷たい空気の中、海の方まで歯磨きをしながら歩いていき、少しピンクがかった空と遠くの氷山を眺めながらグチュグチュぺっ!
あぁ、シアワセ。

53次で行かせてもらった袋浦というペンギンルッカリーのある場所では、すぐ側をペンギンもウロウロしていたなぁ。(参照:「ペンギン保育園」

昭和基地に戻ると、建築作業のお手伝い。53次では自然エネルギー棟という建物を作るお手伝いをさせてもらったが、しらせが接岸できなかったために屋根の資材が基地に届かず完成を見ることはできなかった。59次では基本観測棟という建物が建てられている。もう外観はホボホボできていて、いずれはここに気象棟や地学棟など、今はバラバラに点在している観測棟が集結する。観測中にブリザードなどが来たりすると各観測棟に孤立状態になる現状を考えると、同じ建物内に色んな分野の隊員が複数人いて観測ができる環境は心強いものだと思う。

屋根の防水シート貼りをお手伝いしたのだが、屋根の上はホント絶景!天気も良くて本当に気持ちよかった。

日射が半端なく強いので、作業していると暑くてたまらない。南極って寒いんでしょうねってよく言われるけど、日焼けを気にしないなら、天気がよくて風のない日は半袖でも全然大丈夫。この日も暑すぎるので、ヒートテックとTシャツだけで十分だった。

53次では何ひとつ建物は完成しなかったけど、いろいろお手伝いさせてもらった建物にはやっぱり思い入れがある。スケートリンクのように凍り付いたゴミだらけの作業工作棟を、みんなでドロドロになってお掃除したなぁ。(参照:「働いてます!」

雪だらけで雪かきや氷のハツリに苦労したけど、今ぜんぜん雪がない。53次では影も形もなかった風力発電だけど、すでに2基も完成しブンブン回ってるし、先日、3基目のアンカーボルト打ちを手伝わせてもらった。自然エネルギー棟の中にもチラっとだけ道具を取りに入らせてもらったけど、もっとじっくりダクトとか見て回りたい。作業工作棟の中も久しぶりに見てみたいなぁ。ホントいろいろ懐かしく思い出す。