ひさびさの『南極授業』

先週の土曜日、わたしの勤務している学校の同窓会向け文化講演会という名目で『南極授業』をさせていただいた。対象生徒の皆さんの中には、人生の大先輩ともいうべき年齢の方々が多くいらっしゃったことから、いつもとはひと味違った気持ちで、少々恐縮しながら授業をさせていただいた。

集まってこられた方々は、みな遠慮がちに後ろの方の席へ座っていかれるようだった。
「そんな前いって寝たらあかんやん…」
といった声もちらほら(笑)。
『南極授業』というタイトルが圧迫感をあたえてしまったのであろうか…。みなさん『授業』というものにあまり愉しいイメージをお持ちではないようだ(笑)。

南極での暮らしや観測の様子、行き帰りのしらせでの様子について等、写真や動画を多く使いながら見ていただく内容にしていたので、正直なところなるべくスクリーンに近い所で見ていただけたらいいなと思いながら、
「あてるつもりも、寝てるからって起こすつもりも、まったくありませんので…」
と言いたい気持ちでいっぱいだった。

途中、南極の氷を見てもらったり、水に入れてパチパチとはじける音を聞いてもらったりする場面も準備していた。みなさん子供のように氷を見つめ、耳を澄ませては音を愉しみ、純粋に喜んでいただけたようで本当によかった。
好奇心がわいてくる時の顔って、大人も子供もすごくステキに輝いている。
“センス・オブ・ワンダー”はいくつになっても思い出せる瞬間があるものだと信じたい。

「センス・オブ・ワンダー」を書いたレイチェル・カーソンは本の中で、センス・オブ・ワンダー=“神秘さや不思議さに目を見はる感性”は、
「やがて大人になると決まって到来する倦怠と幻滅、あるいは自然の源泉からの乖離や繰り返しにすぎない人工的快感に対する、つねに変わらぬ解毒剤になってくれるものである。」
と言っている。

今回の授業が、「へぇ〜!」って思うような話を聞いたり「ほぉ〜!」って思うようなものを見たりするイイ機会になっていれば幸い。。。
氷のことだけでもいい、かわいいペンギンの映像だけでもいい、なにか印象に残るような感動をもって帰っていただけたなら光栄だ。
私が南極で感じてきた色々な思いの、ほんの少しだけでも伝わっていたら…
センス・オブ・ワンダーを刺激するほんの小さなきっかけにでもなっていたら嬉しい…。

授業の最後には豪華な花束までいただき、本当に恐縮な一日だった。

大人も子供も関係なく「へぇ〜!」ってゆう感動、好奇心をもってもらえる授業を、もっともっとたくさんしていきたいと思う。