ザ・シティ・ダーク

ザ・シティ・ダーク」という映画をみてきた。
最初に映されるシーンは、窓からやさしい 光が漏れ出す家と、その奥に広がる夜空。
その夜空には無数の星々が光り輝く 。
美しい田舎の夜空…。
そこから、光が溢れかえる賑やかな夜の ニューヨークに場面が切り替わる。
そして、カメラはビルとビルの間に見える星のない都会の夜空を映し出す。
本当に同じ空なか…?信じられないくらいに対照的な2つの夜空。

とてつもなく大きな“宇宙”の広がりと…自分もその一員なんだということを感じることができる空、、、
一方で、便利なものに囲まれながら自分の周りのほんの小さな世界しか見ないで過ごす人々の暮らしの上にひっそりと存在する空。

どちらが豊かな生活なのか、幸せな生活なのか…。
人の価値観はそれぞれ違い、考え方や感じ方も違う…。
若い頃の私は、何にも考えず、ただただキレイな街の夜景を愉しんでいただけ…。
でも、色んなところへ行き、色んなものを見て、色んなことを経験し、感じ考えてきた今の自分だからこそ、本当にシアワセを感じる場所は、後者の空の下にはないと思える。

人間はどんどんと、加速度的に便利な生活を送ることができるようになってきている。
自分だって、便利な生活に依存し快適さを感じながら生きていることも確か。
しかし、その便利さとひきかえに失っているものがたくさんあるのだということを教えてくれる、考えさせられる映画だった。

不必要なまでの「光」によって、星空が失われただけでなく、動物の生態系や人体にまで影響を及ぼそうとしていることなど、多方面からの問題も投げかけられていた。
でも、だからこうしよう!という押し付けがましさがないところもよかった。


全村避難によって暗闇を取り戻した飯舘村で、動物写真家の小原玲さんが撮られたホタルと星空の写真を見て感じたことと同じようなことを感じた。
人が快適な生活を追い求め、そのために必要な電力を多量に作り出す原発を動かし、そして人の力では制御しきれない事態に陥ったとき、人の営みが消え、そのことでやっと自然の風景がよみがえった…。
なんてシンプルで愚かなオチなんだろう…って思ってしまう。

生物たちは、けなげなくらい自然に身をゆだねて生きている。
ヒトは…、、
自分も含め、自分勝手で傲慢な生き物だなぁとつくづく思う。
おりこうさんなのかアホなのか、、、ホントによくわからなくなる。

本当に大切なものって、利口すぎると見失ってしまうのかもしれないな…。