鼓動

高校時代、体操部でいっしょだった大切な仲間の一人が最愛の人を突然亡くし、いま大きな大きな悲しみの中にいる。
力になりたい気持ちでいっぱいなのに、私にできるのは心配くらい。はがゆくてしかたない…。

告別式で喪主をつとめた彼女の挨拶は立派なものだった。
声優でもある彼女の話す言葉は、きれいで…優しく…愛情にあふれていた。
胸がしめつけられるおもいだった。

こんなふうにパートナーのことを素直に愛し、そして愛された、あたたかく愛情深い結婚生活が、こんなにもあっけなく、突然、終わってしまうことがあっていいのか…。
人生、ほんとうに何が起こるかわからない…。
運命とでもいえばいいのだろうか?しかし、とても納得などできるものではない…。

告別式から帰宅した私は、リビングで うたた寝している旦那様の背中にそおっと耳をあてた。耳に伝わる体温と鼓動を感じながら、その尊さについて考えた。
いくら頼りない背中でも、わかりあえないことばかりでも、その止まらない鼓動を聞いているだけで、意味もなく落ち着く気がした。
空虚な安心感の中、わたしも心地よい眠りについた。
悲しみの中にいる彼女が1日でもはやく前へ進んでいけるよう祈りながら…。